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東京地方裁判所 昭和55年(ワ)238号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

1 本件不動産の実質上の買主は当初から被告であつて、<証拠>は被告の転売を有利にするための形式上のものに過ぎず、平野、林は、本件不動産の売買に関し、被告の代理人ないし被告の依頼を受けた仲介人の立場にあつたものと認めるのが相当である。

2 しかして、平野、林が被告の代理人であるとすると、原告は被告代理人から本件不動産売買の仲介を依頼されたことになり、契約成立の場合に、被告に対し仲介人としての報酬請求権を有することになる。又平野、林が被告の依頼を受けた仲介人であるとすると、原告は平野、林と共同して仲介に当つたということになり、被告が原告の介入を特に除外する意思を表明しない限り(本件においては被告に、その除外意思のあつたことは窺われない)、被告の黙示の仲介契約がなされたものとして契約成立の場合に、平野、林の被告に対し有する報酬請求権について共同して右請求権を行使しうることになる(この場合特約等特段の事情のない限り、売買の仲介に尽力した度合に応じて報酬額を按分して請求することになるか、不可分債権かの問題がある)。

3 しかしながら、前認定のとおり原告の仲介活動たるや、平野、林を売主代理人石黒に紹介したのみといつても過言ではなく、又平野、林も交渉中途で被告によつて遠ざけられた(代理権授受行為ないし仲介契約の解約)後、売主代理人石黒と被告との直接交渉で本件売買契約の締結に至つたものであるから、右契約の成立は、原告或は平野、林を含めた原告らの仲介活動によるものとはいえず、このことは原告も民法一三〇条を主張することにより自称するところである。

4 ところで民法一三〇条の要件については、一般に、不動産の売渡及び買受の仲介を宅地建物取引業者に依頼した場合であつても、依頼者である売渡人又は買受人がなお自ら適当な相手を捜してその者との間に売買契約を成立させることは許されているということとのかねあいから考えるべきである。すなわち、売買契約の当事者双方が、仲介人の仲介によつて間もなく契約の成立に至るべきこと(仲介活動と成立時期及び売買価額の近接体)を熟知しながら、仲介人の仲介による契約の成立を避けるため、仲介人を排除して直接当事者間で契約を成立させたものであるといつた要件が必要であると解すべきところ、原告或は平野、林を含めた原告らの仲介活動は前認定のとおりであるから、右要件を充足するものとは到底いえず、他にこれを認めるに足る証拠もない。

5 しからば宅地建物取引業者たる原告の被告に対する仲介契約に基づく報酬金請求はその理由がな<い。>

(根本久)

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